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HPVワクチン接種はお済みですか？
みなさんこんにちは。
小学6年生から高校1年生までの女の子が対象となるHPV（ヒトパピローマウイルス）ワクチンの接種はお済みですか？
HPVワクチンは子宮頸がんをはじめとするヒトパピローマウイルス感染に関連する種々の病気を予防する、大切な定期接種ワクチンです。定期接種期間を逃してしまうと、十分な効果が期待できなかったり、高額な自己負担が必要となってしまいます。接種券を受け取ったけれども接種はまだ、という方はぜひ夏休み中の接種をご検討ください。
目次
『マザーキラー』とも呼ばれる子宮頸がん
子宮の入り口にあたる「子宮頸部（しきゅうけいぶ）」に発生するがんが「子宮頸がん」です。日本では1年間に約1万人の女性が子宮頸がんと新たに診断され、3000人ほどが子宮頸がんで亡くなっています。子宮頸がんの診断は子育て世代の30-40代がピークとなるため、『マザーキラー』とも呼ばれます。
子宮頸がんのほとんどはヒトパピローマウイルス（HPV）というウイルスの感染が原因であることが分かっています。HPVは性的な接触によって男性にも女性にも感染する、ありふれたウイルスです。ほとんどの女性が一生に一度は感染するといわれています。約10％でHPV感染が長期間持続し、さらにその中の一部が数年後に子宮頸がんへ進行すると考えられています。
子宮頚がんを予防するHPVワクチン
HPVの感染を予防することで子宮頸がんの発症を防ぐことを目的に、HPVワクチンが開発されました。現在一般的に使用される9価HPVワクチンを接種することで、8-9割の子宮頸がんを予防できると推計されています。そして、HPVワクチン接種と子宮頸がん検診を適切に組み合わせることで、子宮頸がんを根絶できるというシミュレーションも存在します。古くから高いワクチン接種率を達成している一部の北欧諸国では、子宮頸がんの根絶が現実のものになりつつあると報告されています。
一方日本では、ワクチンの副反応に対する「社会的な」懸念から、接種の積極的な推奨が差し控えられ、ワクチン接種がほとんど行われていない状態が長く続きました。最新の知見に基づき2022年から接種の推奨が再開されたものの、HPVワクチンの重要性が十分周知されているとは言いがたい状況です。
最新のデータでは、定期接種の期限を迎える高校一年生世代のHPVワクチン接種率は、岩手県で51.8％でした。これは全国平均の41.9％に比べると高い値ですが、約半数のお子さんが接種できていないことになります。この未接種者の中からも将来子宮頸がんを発症してつらい思いをする方が出る可能性を思うと、当院として一人でも多くのお子さんに接種の機会を設けたいと考えています。
＼ 子宮頸がんとHPVワクチンに関する詳しい情報はコチラ ／
高校一年生は夏休みまでに1回目の接種を！
HPVワクチンが無料で接種できるのは、高校1年生（相当の年度）の3月までです。最後のワクチン接種は初回ワクチンの6か月後になります。すべてのワクチン接種を無料で行うには最初のワクチンを9月までに実施する必要があります。ギリギリまで待たずに、時間に余裕がある夏休み中の接種をご検討ください！
14歳までに開始すると2回接種で済みます
シルガードの接種回数は年齢により決められています。14歳まで（15歳の誕生日を迎える前）に1回目の接種ができると、計2回の接種で済ませることができます。14歳の方は誕生日を迎える前の早めの接種をご検討ください。
副反応について
HPVワクチンでも他のワクチンと同じように、接種部位の腫れや痛みといった局所の副反応が見られる場合があります。重篤な副反応は極めてまれであり、十分な安全性が確認されています。
ワクチンによる副反応とは異なりますが、筋肉注射で投与するため注射時に特有の痛みを感じることがあります。また、接種直後に冷や汗とともに顔色が悪くなり、一時的に意識が遠のいてしまうことがあります。これは「迷走神経反射」と呼ばれる状態で、注射の痛みや緊張により自律神経のはたらきが乱れることで起こる症状です。ワクチンの成分によるアレルギー反応とは異なり、ほとんどの場合安静により症状は改善します。こうした症状を見逃さないため、当院ではワクチン接種後に院内での経過観察の時間を設けています。
親御さんの中にはかつてHPVワクチン接種後に起きたとされる「多様な症状」の問題が報道等で話題になったことを覚えている方がいるかもしれません。「多様な症状」とは、知覚・認知・運動機能に関連する症状を指します。その後の大規模な調査で、こうした症状は思春期の子どもに一定の頻度で認めうるものであり、HPVワクチンを接種した子どもと接種していない子どもで同程度の頻度であったことが確認されました。現在では「多様な症状」とHPVワクチンの関係は明確に否定されています。
接種券をなくした方は
接種券を紛失された方はお住まいの自治体の担当窓口までご相談ください。北上市ではWEB手続きで再発行が可能です。
花巻市にお住まいの方
花巻市にお住まいの方でも市役所で簡単な手続きをとることにより、当院で定期予防接種を受けることができます。詳しくはコチラの記事を参照ください。
男性の任意接種も可能です
女性のためのものというイメージが強いHPVワクチンですが、男性にもメリットがあります。ひとつは将来のパートナーにHPVを感染させることを防ぐため、もう一つは中咽頭がんや肛門がん、尖圭コンジローマといった男性が罹患する可能性があるHPV感染に関連した病気を防ぐためです。
海外では男性のHPVワクチンが定期接種となっている国が多数あります。一方日本では男性の定期接種化の見込みはありません。一部の自治体では独自に接種費用の補助が行われていますが、残念ながら岩手県では男性への補助はありません。そのため、男性のHPVワクチンは全額自己負担となってしまいます。
現在日本で男性への接種が認められているワクチンは、4価HPVワクチンの「ガーダシル」です。シルガードに比べてカバーされるHPVの型が少ないものの、十分な効果が期待できます。近い将来シルガードも男性への接種が認められる可能性があるものの、当院としては適切なタイミングでそのときに利用可能なワクチンを接種することが望ましいと考えています。
当院ではHPVワクチンの任意接種を受け付けています。対象となるのは、小学6年から高校1年に相当する年齢の男性です。ガーダシルはすべての年齢で計3回の接種が必要となります。また、シルガードと同じく筋肉注射での投与です。接種費用は1回17000円です。（2025年7月時点）
2025年8月より男性へのシルガード接種が認可されました。当院としては15歳未満で接種を開始される方へはシルガードをおすすめします。15歳以上で開始する場合には、計3回の接種が必要となりガーダシルに比べて高額となるため、ご家族の意向を優先します。（2025年8月26日追記）
＼ 男性のHPVワクチンに関する詳しい情報はコチラ ／
ぜひお子さんとともに相談を！
接種券が届いていたのを忘れていた、そんなワクチンがあるのを知らなかった、という方はせっかくなのでこのままLINEから受診予約を取ってみてはいかがでしょうか。当院では1か月先まで予防接種の予約が可能ですので、まだご希望の日時での予約が可能なはずです。
親も子どもも時間が取れない、注射が怖い、なんかよくわからないけど不安、といった想いの方もいると思います。そのような場合は、ぜひ一度お子さん本人を交えて家族での相談の場を作ってみてはどうでしょうか。将来万が一のことがあった時に、「この病気を防ぐ方法があること自体を知らなかった」「自分で考えて判断するチャンスすら与えられなかった」という後悔が一番つらいのではないかと思います。
ご不明な点は当院までお問い合わせください。
